恋の人、愛の人。

今朝は抱きしめられる事はなかった。
普通に送り出された。…余程、前回は節操がなかったと反省したのかも知れない。…ここは会社だから。それに、逸ってはいけないと言った。
これは私の勝手な見解だ。

水曜も部屋に迎えに行くから、帰って居てくれないかと言われた。
誘ってラーメンを食べて、おやすみとなる訳だが、それだけでも二人で一緒に過ごせたらと思っている、自分勝手に忙しなくて申し訳ないが許して欲しい、と。

確かに。…たったこれだけの事をわざわざ迎えに来てまでなんて…しなくていいじゃないかって。でもそうでもしないと二人では会えない。
夜は長い…。だけど、今は、会っている時間を自然と延長するような関係ではない。食事と言われていれ済めば終わり。それに、誘われること全てにOKを出す必要もない…はずなのに。
当たり前のように願いをきいてしまうのは“部長”だから、かな…。


水曜の夜。早く終わって部屋に帰っていた私は部長からの連絡を待っていた。下に着いたら連絡をすると言われていた。でも…。

…はぁ、もう明日になっちゃいますよ、部長…。
お腹は空き過ぎてピークは過ぎた。待ちながら水分で満たしていたからだ。この時間からラーメンを食べるとなると…明日は確実に顔がむくんでしまう…。

ブー、あ、『ハルちゃん』だ。

【着いたよ。下に居る】

あ、…。んー、とにかく下りていくかな…。

【直ぐ下ります】


下りて行くと部長の車は駐車場の脇に停まり、ハザードが点滅していた。車にもたれるように立っていた。

「部長」

「あぁ、約束だから来たんだけど、申し訳ない、あまりに遅くなってしまったな。ずっと待たせてすまなかった」

「それは構わないです。どこかでずっと待たされた訳ではありません、部屋に居た訳ですから」

「それでも、まだかまだかって寛げなかっただろ」

「はい。それはありましたけど」

正直に気が抜けなかった事を告げた。

「うん…。何もまだ食べてないなら…ラーメンと言わず何か食べようか?」

「部長は?」

「勿論、私もまだ何も食べてはいないよ」

…はぁ。食事を伴う接待とかがあった訳でもないんだ。

「部長は庶民派ですか?」

「ん?」
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