恋の人、愛の人。
「少し冷めたかと思います。大丈夫だと思いますが、一口目、気をつけてどうぞ」
タオルも急いで取って来た。膝に掛けた。
「…これは?」
「あー、機嫌を悪くしないでくださいね。決して子供扱いしてる訳ではないんです。でも万が一、ポトッと落ちた場合大変ですから。これも備えです。私が深く考えもせずカレーなんて作ってしまったから。
しかも、暑いのに、時短を優先して…熱い物を作ってしまいました。…すみません」
…。
「あ、もしかして、ピーマンが駄目とか、ありました?私、好き嫌いとか確認もしないで…すみません」
「…いや、大丈夫だ。嫌いな物はないから。…頂くよ」
何故だかタオルを手に部長が立ち上がった。…あ。
…え、…違いますよ、これは…時間がないんです。こんな事をしている場合では…。
「ん……ぶ…部、長…」
抱き込められた正面にある胸を軽く押し返した。
「…すまない。どうしても欲しくなったから頂いてしまった。…まだ、もう少し…頂きたくなってしまった…」
始めは唇が触れただけだった。そして抱き込められた。
だけど今は、顔を上向かされるように両手で包まれ食まれていた。上唇も下唇も、ゆっくり、じっくり食まれた。…ぁ。強く唇を食まれた。ん゙…更に深く熱く…交わり続けた。…抱き込まれた。
「ん。はぁ…参ったな…すまない。こんなにしてしまうとは…すまなかった。状況も考えず…堪えられなかった」
「あ…あの、部長。じ、時間がなくなります、…どうぞ、食べてください」
部長…いきなりこんな…。避けるとかそんな余裕もなかった。今はどんなにバクバクしていても動揺をあらわにしている場合じゃない。何でもない振りでとにかく間に合うように送り出さないと。…はぁ、こんな事されるなんて。とても冷静ではいられない。昼間だからって考えて、上げて…そこが甘いんだ。
「…ん。頂くよ」
ドキッとした…。条件反射だ。次から、頂きます、と言われたら、つい身構えてしまいそうだと思った。
「…熱くないですか?大丈夫ですか?今回も手抜きでこんな物ですみません」
「いや、大丈夫だよ。熱さも丁度になってる」
それは部長が少し…冷める時間を足したからです…。