恋の人、愛の人。
「食べて貰いながらですが、話をしてもいいですか?」
「内容にもよるが、構わないよ」
そうよね。楽しい話題ではないから…。ご飯の時には合わない。
先にお茶を入れようか。
お茶を入れて置いた。
珈琲を飲んで待ってようかな。
カップを持ってソファーに移動しようと思った。
「ん?話は?いいのか?」
そうだ、言っておかないと変よね。
「あ、すみません。ご飯の時に話す事ではないかなと思って、止めました」
立ち上がってソファーに移動した。
「…正面に居ると食べ辛いですよね。部長のペースで召し上がってください」
…はぁ。…自分から緊張した空気を作ってるみたい。
小さいボリュームでテレビを点けた。
「ご馳走様。美味しかったよ、有り難う」
部長はそう言いながら食器をキッチンに運ぶとこっちに来た。
珈琲カップを手に隣に座った。
「あ、そのままにしておいて貰って良かったのですよ」
「いや、大した事では無い、運んだだけだ。待たせたね。…聞こうか」
「はい。実は今夜、黒埼君にメールをして、お兄さんのお墓参りをしたいから教えて欲しいと頼んだんです。そしたら、明日、話しに来るって」
「…そうか。では、弟だと知られてしまった事、自分のタイミングで言いたかったかも知れなかったな。悪い事をしたな…」
「大丈夫だと思います。黒埼君も、私とは何度も会っているんです。言い出しにくい事だから、中々タイミングが掴めなくて困っていたかも知れませんから」
「稜の墓参りなら私も行こうか?…いや、二人だけの方がいいかな、…稜と」
あ、…。
「特にこだわった気持ちはありませんが、場所を教えて貰ったら、一人で行きたいと思っています」
早く会いたくなった。
「そうだな。それがいい。…昨日は……いや」
あれだけ心配してくれていたんだから。…話せる部分は話しておいた方がいいに決まってる。
「…昨日から海に居ました。それで今朝は…海から昇る朝日を見て…凄いなぁって思って。…帰って来ました」
「…そうか。聞くことではないのだが、やはり随分泣いたのか…」
前を見ていた部長がゆっくりとこっちに顔を向けた。
「あ…、はい。水分がなくなるくらい。なんて…本当はよく解りません。泣きながら寝てしまっていたので。
だから、朝、凄い事になっていたんです。もの凄く瞼が腫れ上がってたらしくて…フフ、目も痛くて直ぐには開けられませんでした」