恋の人、愛の人。
「じゃあ、帰ります」
「ゔん。有り難う」
「梨薫さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。あ、木曜はだから休んだのよ?」
「え?体調不良っていうのは」
「うん。稜が病気で…それが進行の早いもので、それで亡くなったんだって知って。
わんわん泣いて、朝、瞼が腫れてたのよ。中々引きそうにないみたいだったから。
金曜は完全なずる休みだけどね。
だから、…大丈夫だから。だから、私に気を遣って優しくしないで?
今まで通りでいい。その方が元気で居られる」
「…はい。解りました。明日、行くんですよね?」
「うん。…稜と話したい事があるの」
「はい。…じゃあ帰ります」
「うん、わざわざ来てくれて有り難う」
「…そりゃあ来るでしょ?来たら梨薫さんに会えるんだから。それに電話やメールでなんて済ませませんよ?そうでしょ?大事な話なんだから」
「フ。はぁ…そうね」
「はい。今日だって、わざと夕方辺りに来て、ご飯をご馳走になって、それで強引に泊まって、あわよくば、一緒の布団に寝て、それであんな事やこんな事をして、と企んでいました」
フ。黒崎君…。いつも通りに、って事ね。
「そう?」
「フ。嘘です…今日は出来ません。流石に俺だってちゃんとします。次、何かの何かがあったら何かします」
「フ。…フフフ。何かって、不明な部分ばっかりね」
「はい。俺はまだ現状維持のままですから。
…中々、帰るって言って帰らなくてすみません。梨薫さんと話しているとやっぱり嬉しいから…もっと一緒に居たいって思って。
明日は気をつけて行ってください。あ、折りたたみ傘、持ってた方がいいですよ?兄貴が雨を降らせますから」
…葬儀の日も、出棺になった途端、雨が降り出しましたから。
「うん、そうね」
稜はどっちかというと雨男だったのかな。
だけど、直ぐ止んで、虹が出るのよね。虹男?それは結局晴れ男なのかな…。