恋の人、愛の人。
「え?」
「う、ん…つまり…男の下心、というモノだ」
溜め息…男の下心…。何だか全く解らない。
「単純に、シートベルトで寄せられたというか、…潰される胸を見てしまった、という事だ」
…あ゙、…は。
「…すみません、気になってばたばたしたから」
「いや、謝られても…身体を捩っているところを見たのは私だ」
…見たのは私だ、って…。凄いいい声だから、こんなの、何だかツボにはまる…。
「すまない。言うとこんな空気になるとは思ったんだけど、黙っていると卑怯な気がしてだな。
つい見た事、謝りたかった。いや、普段からって訳じゃない…そこは、誰のも、見境なく見てる訳じゃないから」
焦ってる。でもここで笑ったら機嫌を損ねてしまうだろう…でも。
我慢すると余計肩が震えそうになったから、俯いて解らないようにしようと思った。口を押さえた。
「あ…すまない。…そんなに…すまん、エロくて…」
すまんエロくてって…駄目だ…、部長が言う?…もう駄目だ、部長が言ってると思うと、ギャップといい、…堪えられない。はぁ、笑い上戸を恨むわ。
「…クス、…ク、ク…フ、フフフ、フ、…フフフ」
…。
「すみません、怒って機嫌を悪くしていた訳ではなく、色々、…ツボに。
笑ってはいけないと思えば思う程、堪えられなくて。だから俯いたんです、すみません」
「…あ、なんだ…はぁ、そうか。でも、やっぱり冷めたか?」
「え?」
「そんな人だと思わなかったとかだな…」
「はい。そんな人だとは思いませんでした。でも、それは人間らしいという意味で、です。男の人らしいと思って。部長は紳士的なイメージがありますから。い、や、あの、紳士的だからエロは駄目だとかでもないですから。とにかく、冷めたとかは無いですから」
なんの話を長々と…。