恋の人、愛の人。
「部長は私がどんな人間か解りますか?」
「人に自分の性格やら、解ったように語られるのは嫌だって、そういう性格かな。こういう風に」
ゔ。いきなり核心をついて来られた。
「自分で言っていたが、調子がいいというのは、男から見ると小悪魔だ。だけどそれに自分は納得したくない。この言葉で括られるのも嫌だ、だろ?
調子がいい事をする時にも、ちゃんと解ってしている時もあるんだからって。
ま、自覚が無い時が殆どだろうがな。…それがまずい」
んー…私って、そんなに解りやすいのかな。て言うか、私はそんな酷い人間なんだ…。
部長にとっては性格判断なんて容易い事なのかな。では、ほぼ部長は、これ以上、私を知る必要も無いって事かな。
「…知っているからだよ。誰よりも1番君を理解している男にさらけ出している、そんな様子を…いつも聞かされていたからだ。色んな話を聞いていれば、どんな人か、興味があれば解ってくるだろ?
俺はずっと、くだらない惚気話だと思って聞いていた訳ではない。
会社で見せている顔以外に、好きな人にしか見せない顔だったり態度だったり、いつも楽しみで聞いていた。適当に相槌を打って聞いていたら稜は話すのを止めたかも知れないが、俺は、それで?と催促するように聞いていた。…妬けたけど、楽しみでもあった」
…。
「だから、稜には、梨薫に対する俺の気持ちはとうにバレていたよ。稜にとっては簡単だ。俺も解らせようとしていたと思う」
…俺が居なくなった後、梨薫を頼む、なんて言われた。頼まれたから好きだと言った訳ではない。好きは元から好きだったんだ。頼まれたから守る訳でもない。好きだから守るんだ。
「俺が人を心から愛せない人間だとは思って欲しくないんだ…」
これは…奥様との事だ。
「…駄目な最低の人間だった。…君には稜が居た。決して壊れる事の無い…そんな二人だ。だからもう…結婚は投げやりになった。それは無責任だし、してはいけない結婚だった。嫌なら強く断れば良かったんだから。
…改心した。途中からではあったけど、妻を大切にしようと思った。だけど、やはり心はあげられなかった。…痴がましい言い方だな。
お互いに、ちぐはぐするばかりだ。妻がこっちを見ていた時は私は違う方を見ていたし、私がやっと妻を見た時は、妻はまた違う方を向いていた…。修復とか、そういう事ではないんだ。多分、二人供、始めから解放されたかったんだよ、そんな生活から。
恋愛の話とは違うが、こんな話を聞いたら、私は駄目かな…」