恋の人、愛の人。
「さて…梨薫ちゃん、どうする?」

さっきのお客様のグラスを片付け、テーブルを拭いて回った。
フロアの明かりは落とし、ドアは鍵をした。
今はカウンターの中の明かりだけになった。

「選択肢は…四つ、くらいかな。
…飲む?」

グラスに氷を入れジンジャーエールを出してくれた。
陽佑さんは瓶のまま飲んでいた。

「あ、やっぱり…五つかな。まず、一つ目、これは、また部屋に帰って見る。居なければそのまま、おやすみだ。
後は、居た場合だよな。ここには裏に部屋がある。簡易だがシャワー室も、ベッドもある。居ようと思えば居ていい。貸してあげるよ?
もしくは…、どこかの宿泊施設に行く。
後は、俺の部屋に行くか、後輩が居ても自分の部屋に帰るか、だな。そんなところ?
ま、俺、後片付けしてるから決めて?」

瓶のジンジャーエールを飲み干すと、グラスを洗い始めた。
帰って、居ないという保証も無い。またそれからのことを考えたら。
甘えてもいいだろうか…。

「あの、ここに居ていいですか?」

「解った、いいよ。じゃあ、先に説明するから、ちょっと来て」

「はい」

店の裏に一緒に入った。

簡単な事務所みたいな部屋があった。
ドアを開けると入り口手前の右にデスクがある。ベッドは左側寄りの奥の壁側。頭はこっちだ。足側になる横には二人掛けのソファーと小さいテーブルがある。

「シャワー室はここね」

入り口左側の丁度へこんだ部分に合わせるように設置されていた。
小さい冷蔵庫の中には水や、ジンジャーエール、珈琲といった飲料が入っていた。
テレビもあった。
簡易宿泊施設より充実しているかもだ。

「鍵は内側から出来る。それと、こっちに来て」

「はい」

後について行った。
裏口だ。

「朝、帰る時は、ここから。それから…これがここの鍵だから」

キーケースをポケットから取り出すと、一つ外した。渡された。

「帰り、かけた後の鍵はここに入れといてくれたらいいから」

外のポストだ。

「解りました」

「あ、トイレは解るよね?」

「はい、大丈夫です」
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