恋の人、愛の人。


「今の状況ならまだ間に合う…そう出来なくなる前にしておきます」

「はい?」

「…恋人ならする事、好きな者同士ならする事。
今はそうじゃない、そうじゃないから出来ない事。
出来ない、しないから、泊まれる事」

「え?ちょっと、もっと簡潔に…具体的に」

「解るでしょ?こういう事です…」

あ。黒埼君の唇はいきなり私の唇に触れた。目が点になった。つまり固まってしまった。

「…瞼くらい、閉じて欲しいな…」

上から顔を掌で撫でられた。
催眠術にかけられた…。そう、これはまるで催眠術。
動かないままの身体、腰を抱き寄せられた。
頬に手を当てられた。抱き寄せられたせいで少し身体はのけ反っていた。

「今なら、しても、後で叱られるだけで済む…俺は子供だから…」

唇が合わされ食まれた。ゆっくり何度も何度も…。
両手が顎の下から添えられた。
ん…。舌先が歯に触れた。ノック…?された…?ん?…ん、ぁ。
ぐっと侵入された。…油断した…フ。
…簡単に侵入させてはいけないんだった。…やられた。

「ん゛ん゛ん゛(駄目よ)」

「…んんん(ううん)」

ゆっくり首を傾げて何度も角度を変え深く合わされ続けた。頬をがっつり包まれた。また食む。ゆっくり何度も食む。

「…ん゛ん゛ん゛ー!(駄目よー)」

「んんんん…(解ってます)」

唇が合わされたまま空いたテーブルの上、身体を寝かされた。
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