恋の人、愛の人。
身体は重なっていた。手首を押し付けられた。指が絡むように組まれた。唇が首を食んでいる。細かく触れながら這って行く、………ぁ。
「…駄目よ、退いて」
「…解って…ます」
組んだ右手を放して首元のボタンに触れた。
「駄目!解ってない!」
「…ん゙ーがぁ…駄目か……はぁ」
「駄目よ、駄目に決まってるでしょ」
上げた顔を見た。
「駄目でもいい感じでイケると思ったんだけどなぁ…残念…」
身体を起こされた。力無く椅子に腰掛けた黒埼君に腰を抱き寄せられた。
胸の下辺りに顔が埋まる。
「ぁ、あのね…解ってないの?」
「解ってますってば。はぁ…するんじゃなかった…。この状態…オサマリマセンよ。…何とかしてください」
……あ。……。
「し、知らないわよ…馬鹿ね…そんなの自業自得でしょ?…。だからって、駄目よ…」
「駄目?」
見上げられた縋るような顔にキュンとしてしまった。……駄目駄目。
「勿体つけてるとか、そんなのとは違うの…」
「…解ってます、…俺が悪いんです。もの凄く欲が出た。無理だって解ってるのに、止めたくなかった」
ストレートなその気持ちは解るの…。
「…うん」
頭を撫でた。ちょっとだけ、抱いた。
「うお、…梨薫さん何して…駄目ですよ、今優しくしちゃ。…本当に…はぁ。
無意識に誘惑するのが上手いんだから…」
顔を押し付けてきたと思ったら下から顔を見られた。…あ、黒埼君…もう…なんだか…可愛い…。
もう一度頭を抱きしめた。黒埼君だって甘え上手じゃない…。
「ぁ…だから…、梨薫さん。駄目ですよ」
なんで俺が止めてるんだよ…。これって…止めなきゃイケるんじゃないのか?…。梨薫さんの方からギュッとしてるんだから。やっぱりいいって事なんじゃないのか。また抱き上げて押し倒すか?
「梨薫さん…、このまま俺…いいですよね」
もう一度…、テーブルに倒して見るかと立ち上がった。
「いいわよ。何日あれば大丈夫?」
「え?…はい?」
何日?
「うちには泊まっていい。だけど、期限みたいな物、決めておいた方がいいでしょ?じゃないと、ずるずるしてしまうでしょ?
黒埼君は部屋に泊めるだけ。自分の事は全部自分でして。恋人みたいな事はしない。約束して。それで、猶予はいつまで必要?」
はぁ、…そっちのいいわよ、ね…。今、ちょっと前に戻って猶予が欲しい…。はぁ。…も゛う…オサマリマセンて…。