恋の人、愛の人。
「梨薫さ~ん、この入ってるやつを観るんですか?」
「え、あ、違う、それじゃなくて、……これ、こっち、これに換えて?
もう随分昔に録画して、観ないまま置いてあったの。あー、恋愛物って大丈夫?退屈?あ、テレビ占拠しちゃうけど、観たい番組はなかった?」
これは稜が録っておいてくれた物。私が好きそうな物は気を利かせて録り溜めていてくれた。
こうしてDVDに録る事も稜がしてくれていた。もうずっと観ないで置きっぱなしにしていた物だ。
「俺の事なら気にせずに。好きなのを好きなように観てください?俺は今、梨薫さんにフラれたばっかりなんで、失恋物だったら泣いちゃうかも…」
「何言ってるのよ。フラれたって…大袈裟な…そういうのとはちょっと違うでしょ?あ、でもね、失恋って、ちょっと近いかも。失恋物っていうか、これね、恋人が突然事故死して、あ、主人公は女性ね。その、恋人の弟が、残された彼女を見守るみたいな、ちょっと、切ないかな。確か…そんな内容なの」
…。
「黒埼君?」
「…わ。俺、もう何だか泣いちゃいそうだ…」
「フフ…感受性が強いの?嘘泣きにしてもまだ早いわよ。黒埼君はこういうの観る事あるの?」
「つき合いでなら観ます」
「だよね。あ、…アイス。取って来なきゃ」
またキッチンに戻った。
カップのアイスを手に戻ってソファーに座った。
「スプーン忘れてますよ、スプーン」
「あ」
「ナハハ、俺が行きますよ、もう先に観ててください。案外、梨薫さんてこんなところがあるんですね」
パチ、パチッと音がした。
「えっ?何?」
暗くなった。
「どうしたの…」
…変なこと考えてるんじゃ……違うわよね…。雰囲気、全然、普通だし、大丈夫よね。
「びっくりしました?心配しないでください。襲おうとしてる訳じゃないですから。こうやって観ませんか?梨薫さんは暗くして観たりしないですか?
怖くないですよね、ホラーを観る訳じゃないから。俺は目に悪いとか気にせず、DVDとか、まあ、深夜の映画とかこうして観るんですよ。この方が気分でしょ?
テレビの明かりがあるから手元が見えない事もないし。映画館だと思えば飲食もしますから」
「あ、うん、私もいつも暗い中で観てるのよ?……あー、いつもこうして観てるんだAV」
「だから違いますって。じゃあ大丈夫ですね。暗くていいなら尚更いつも俺に気を遣わずに観てくださいよ。…はい、どうぞ」
戻った黒埼君からスプーンを受け取った。
隣に黒埼君が座った。
「有り難う。こんな…人と並んで座ると、…いつもと違う。何だか映画館みたいね。規模は明らかに違うけどね」
「そう、キャパはたった二人だけの超激狭映画館。ハハハ。…特別なシアタールームですよ。それにカップルシート的な?ですよ。
はい、…どうぞ、始まりますよ?」
敷いていた布団から掛け布団を引っ張って膝に掛けた。
「…有り難う。…ねえ…目を閉じて?」
アイスの蓋を取り、テーブルに置いた。
「…ぇえ゙っ?…梨薫さん?いきなり何ですか…」
「いいから。…こっちを向いて…閉じて。早く…」
うぉ…梨薫さん…?何だ…。ゴク…。
「閉じたら、口、開けて?…」
…え゙?口?口開けるとか…梨薫さ、ん?…何するつもりだ…。取り敢えず言われた通りにしてみるか…。瞼を閉じて少しだけ口を開けた…。
……何だ?…静かだ…こんなのドキドキするだろ…。…まだか?…まだなのか?…。早くって言ったのに。何…するんだ…。
「はい、あ~んして。…美味しい?」
開いた唇の隙間からスプーンが侵入して来た。
「わ゙、冷たっ!」
口を押さえた。
「フフフ、アイスでした~。美味しいね、イチゴソースのところ。どう?今度はね…、チョコのところあげる、はい、あ~んして」
…ハハハ、…悪魔だ。生殺しだ…。何かを期待した俺は馬鹿をみたじゃないか。これだから…悪意のない無邪気は困るんだよな…はぁ。
それとも…わざとか?わざとだな…。俺、確実に弄ばれてる…。
「はい、黒埼君」
「あ、はいはい」
本当に…も゙う…なんなんだよー。さっきの俺の攻めはやんわり拒否したのに…。
…これは、そうだよ…、ただアイスを食べらされただけの行為だよ…。そうだ、…はぁ。絶対天然だ。そう思っておく。
「何か期待させちゃったかしら?」
いや…やっぱり仕返しだな。何もしちゃいけない俺に、虐めだ。いたぶりだ。
「え、あ、違う、それじゃなくて、……これ、こっち、これに換えて?
もう随分昔に録画して、観ないまま置いてあったの。あー、恋愛物って大丈夫?退屈?あ、テレビ占拠しちゃうけど、観たい番組はなかった?」
これは稜が録っておいてくれた物。私が好きそうな物は気を利かせて録り溜めていてくれた。
こうしてDVDに録る事も稜がしてくれていた。もうずっと観ないで置きっぱなしにしていた物だ。
「俺の事なら気にせずに。好きなのを好きなように観てください?俺は今、梨薫さんにフラれたばっかりなんで、失恋物だったら泣いちゃうかも…」
「何言ってるのよ。フラれたって…大袈裟な…そういうのとはちょっと違うでしょ?あ、でもね、失恋って、ちょっと近いかも。失恋物っていうか、これね、恋人が突然事故死して、あ、主人公は女性ね。その、恋人の弟が、残された彼女を見守るみたいな、ちょっと、切ないかな。確か…そんな内容なの」
…。
「黒埼君?」
「…わ。俺、もう何だか泣いちゃいそうだ…」
「フフ…感受性が強いの?嘘泣きにしてもまだ早いわよ。黒埼君はこういうの観る事あるの?」
「つき合いでなら観ます」
「だよね。あ、…アイス。取って来なきゃ」
またキッチンに戻った。
カップのアイスを手に戻ってソファーに座った。
「スプーン忘れてますよ、スプーン」
「あ」
「ナハハ、俺が行きますよ、もう先に観ててください。案外、梨薫さんてこんなところがあるんですね」
パチ、パチッと音がした。
「えっ?何?」
暗くなった。
「どうしたの…」
…変なこと考えてるんじゃ……違うわよね…。雰囲気、全然、普通だし、大丈夫よね。
「びっくりしました?心配しないでください。襲おうとしてる訳じゃないですから。こうやって観ませんか?梨薫さんは暗くして観たりしないですか?
怖くないですよね、ホラーを観る訳じゃないから。俺は目に悪いとか気にせず、DVDとか、まあ、深夜の映画とかこうして観るんですよ。この方が気分でしょ?
テレビの明かりがあるから手元が見えない事もないし。映画館だと思えば飲食もしますから」
「あ、うん、私もいつも暗い中で観てるのよ?……あー、いつもこうして観てるんだAV」
「だから違いますって。じゃあ大丈夫ですね。暗くていいなら尚更いつも俺に気を遣わずに観てくださいよ。…はい、どうぞ」
戻った黒埼君からスプーンを受け取った。
隣に黒埼君が座った。
「有り難う。こんな…人と並んで座ると、…いつもと違う。何だか映画館みたいね。規模は明らかに違うけどね」
「そう、キャパはたった二人だけの超激狭映画館。ハハハ。…特別なシアタールームですよ。それにカップルシート的な?ですよ。
はい、…どうぞ、始まりますよ?」
敷いていた布団から掛け布団を引っ張って膝に掛けた。
「…有り難う。…ねえ…目を閉じて?」
アイスの蓋を取り、テーブルに置いた。
「…ぇえ゙っ?…梨薫さん?いきなり何ですか…」
「いいから。…こっちを向いて…閉じて。早く…」
うぉ…梨薫さん…?何だ…。ゴク…。
「閉じたら、口、開けて?…」
…え゙?口?口開けるとか…梨薫さ、ん?…何するつもりだ…。取り敢えず言われた通りにしてみるか…。瞼を閉じて少しだけ口を開けた…。
……何だ?…静かだ…こんなのドキドキするだろ…。…まだか?…まだなのか?…。早くって言ったのに。何…するんだ…。
「はい、あ~んして。…美味しい?」
開いた唇の隙間からスプーンが侵入して来た。
「わ゙、冷たっ!」
口を押さえた。
「フフフ、アイスでした~。美味しいね、イチゴソースのところ。どう?今度はね…、チョコのところあげる、はい、あ~んして」
…ハハハ、…悪魔だ。生殺しだ…。何かを期待した俺は馬鹿をみたじゃないか。これだから…悪意のない無邪気は困るんだよな…はぁ。
それとも…わざとか?わざとだな…。俺、確実に弄ばれてる…。
「はい、黒埼君」
「あ、はいはい」
本当に…も゙う…なんなんだよー。さっきの俺の攻めはやんわり拒否したのに…。
…これは、そうだよ…、ただアイスを食べらされただけの行為だよ…。そうだ、…はぁ。絶対天然だ。そう思っておく。
「何か期待させちゃったかしら?」
いや…やっぱり仕返しだな。何もしちゃいけない俺に、虐めだ。いたぶりだ。