恋の人、愛の人。
「梨薫さんを襲う事は簡単なんですよ?力だって断然俺が強いんです。
こうして、…拘束してしまえば、梨薫さんは動けない。突然だと声も出ない。後は…口を塞ぐ…キスをして…。
そんな事、あるかも知れないって、毎日ちゃんと警戒してますか?…」
身体の半分。上半身は布団の上に倒され、両方の手首をがっちり握られていた。
薄暗闇の中、見下ろされていた。
確かに、声も咄嗟には出なかった。力で制止されては動けない。力以外のモノにも…。
これを、襲うというのだろうか。逆に、こういう事、あるかも知れないって、心のどこかで期待にも似た気持ちを…私は持っているんじゃないのか…。
嫌いじゃないって…一番一緒に居てはいけない相手なのかも知れない。
「恐い?俺が恐くなった?」
「…どうぞ?」
「え?」
「信じてるから警戒はしてない。だから、されても仕方ない。どんなに約束していてもそれは…意味をなさない時もある。それが例えば今っていうなら…。
いいわよ?」
…。
「はぁ…も゙う狡いな、梨薫さんは。…上手過ぎる…。こんなの…そんな風に言われたら、できる訳ないじゃないですか」
掴まれていた腕を引き上げて起こされた。
「梨薫さん…」
抱きしめた。
「狡いですよ…本当。…俺は襲ったりしない。そんな風にはしない…」
こんな風に抱きしめる事は別物扱いにしてしまったのかな…。
「黒埼君…期限までは居て?この部屋使っていいから。私が出るから」
「…え?」