恋の人、愛の人。


「武下君、ちょっと」

「はい」

課長、何だろう。帰るつもりでパソコンをシャットダウンしていたところだった。

デスクに行った。

「はい」

「申し訳ない。これを頼めるかな」

課長はかなりの量の資料を取り出して見せた。

「実は別の社員に頼んだ物なんだが、…はぁ、全く出来てないんだ。要所要所、抜けてるし、これでは明日使えないんだ。
肝心の張本人はもう帰ったとみえる、いいかな、お願いしても」

まあ…早帰りと決められた日だから、そりゃあね、帰る事に重要さをおいたのだろう。
私も帰る準備をしていたところだし。

「今日はノー残業デーだ。だから、フロアの明かりももう少ししたら落ちてしまう。パソコンのファイルからこの資料を出して、作り直して貰いたいんだ。
勿論、フロアの明かりは点くようにするから」

…見るからに困っている。…はぁ、仕方ないか。

「解りました。ちょっと見せてください。
もう、マークは付けてありますか?チェック済みですか?」

ペラペラとめくって見る。

「ああ、直して欲しいところはチェックしてある」

この量、どのくらいで終わらせられるだろうか…。部長は、部長室で私を待っているはず。
これをやるとなると多少なりとも待たせてしまう事に…。
ブン。…あ。
電源が落とされたのだろう。廊下の明かりだけになった。

「おっと。じゃあ、私はちょっと電源を入れに行って来るからね。点いたら頼むよ」

「あ、はい」

課長はそそくさと出て行った。


パソコン…立ち上げたいところだけど、まだかな…。バッテリーとか、会社のはそういう風にはなってないのかな。

あ、点いた。フロアが明るくなった。
パソコンを立ち上げ共有ファイルを開けた。
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