恋の人、愛の人。
これなら30分あれば何とかなるかな。
人の作った物には癖があるというか、違いはないのだろうけど何だかやり辛い気がする。
量があったから、集中力も切れたのかも知れないが。
出来ましたと出すなら、間違いない事を確認してからだ。

よく見ていったら、脱字もあるし、…はぁ、課長は本当、重要なところのミスしかチェックしてくれて無いじゃない…。
これは先に頭から見直しをしないと駄目だって事だ。


んー、…出来た。ファイルを別で保存して、プリントアウトを始めた。
とんだ災難だ。…あ…何時?…私は部長にこの事を伝える事を忘れていた。大変だ…。待たせてしまってる。
…課長。…え?課長?……え゙。
課長が居ない。いつから?…え?明かりが点くように出てから戻ってないような気がする…。

印刷の済んだ用紙を揃え、クリアファイルに収めた。パソコンをシャットダウンさせた。
課長のデスクに置いた。
……これって…もしかして課長が作った物だったんじゃないの?
あたかも誰か社員のミスみたいに言ったけど…。大体…人が居なくなるのを見計らったように声を掛けて来るなんて可笑しいもの…。待ってたのよね、人が居なくなるのを。
明日使いたい資料だったから。出来てないと困るから…きっとそうだ。
そうに違いない。だって中途半端でもチェックをした時間は、まだ就業時間内だったと思うから。
だとしたら作ったとされる人物もまだその時は帰ってなんかない事になるんだし。

「あー、武下君、出来た?」

はぁあ?今頃、時間を見計らったように戻って来て…。

「いや〜、守衛さんとね、話が弾んじゃってね。悪かったね、ご苦労様、助かったよ」

まだ出来たなんて言ってないですけど?
クンクン…何だか珈琲の匂いと煙草の匂い…。別に欲しくもないけど、私は差し入れ的な、もしくはご苦労様的な珈琲さえ、貰ってないんですけど?まあいい。もう帰ろう。

「…お疲れ様でした、資料はデスクに置きました。よく見返したつもりです。何か不都合があったらファイルに保存してありますから」

「解ったよ、有り難う、お疲れ様」

本当…お疲れ様ですよ。大変…、急がなきゃ。
ポーチを手にした。

「武下君」

はい。まだ何か?……え?いや、この声は…。しかも後ろから…。振り向いた。そこにはいい声の主が居た。

「部、長…」

「待ちくたびれたから迎えに来たよ」

「ぶ、部長!」

今のは私じゃない、課長があげた声だ。
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