恋の人、愛の人。
暫く走ると、それらしい場所に来たのだろう。駐車場に入って行った。
どうやらこのビルの一室が今日のお店らしい。
車を降りてエスコートされながら、一緒にエレベーターに乗った。
各階ごとのお店の表示があった。
…あ、これ。
「部長。駄目です。ここは駄目です」
「ん?」
あ、着いてしまった。エレベーターのドアが開いた。
もう目の前がいきなり店舗の入り口だ。
…こんな高級中華。無理よ。まさか、こんなお店に連れて来られるとは思わなかった。
「駄目です。私、もっと、庶民的なお店のつもりで言っ…」
「シーッ」
え?
前に支配人のような人が現れていた。…あ。もう、こんな事、話せなくなってしまった。
「晴海様、お待ちしておりました」
「待たせてしまって申し訳ない。大丈夫だっただろうか」
「はい、幸い、後のお時間のご予約はない日でしたから、お時間一杯大丈夫でございます。では、いつものようにこちらから」
「ん。…行こうか?」
入り口脇の隠し扉のようなドアが開けられた。
どうやら、簡単には開かないようになっているみたいだった。
支配人がカードキーのような物で操作していた。
どうぞ、ごゆっくりと、そう言って部屋に案内すると奥に姿を消した。
「どうした?ここでは都合が悪いのか、駄目だったのか?」
あ、さっきの続き…。
「何て言いいますか…私はごく一般的なお店を想像していたものですから。そういう中華料理屋さんで、と」
何も言わなければ良かったかな。こんな…一品のお値段で、外食の一食分以上にもなりそうなところ…それ以上…かも知れない。まさか、ここまで高級なお店に連れて来られるとは思ってなかったから。
「何が好きだ?」
…あ、え?
「私、エビチリが…好きです」
「そうか」
見せられたメニューには金額が書かれていなかった。
…わぁ…もう本当大変なところに来ちゃったみたい。