恋の人、愛の人。
「あの、それは違います」

「一緒に暮らしているだろ。いや、今はいただろうと言った方がいいか」

「部長…。部長は何を…」

「何をどこまで知っているかって?」

「…はい」

「今は…バーの一室に居るって、ところまでは知っている」

あ、…。どういう事…。何故…私とは何も関係ない部長がそんな事まで。

「俺は…知ってるんだ。君の事は何でもと言ったら言い過ぎだが、とにかく、知ってる」

どうして…。黒埼君も似たような事を言っていた。確か私が知らないのに、昔から知ってるみたいな言い方をしたと思う。……どうして?

「こんな言い方をしたら気持ち悪いか…。気を悪くしないでほしい。人を付けて見張らせているとかではない。まして、黒埼とつうつうという事でもないから」

なのに知ってるって…どう納得したらいいのだろう。気を悪くするなと言われても、ちょっと無理かも。

「梨薫さん…恋愛はどれくらいしていない?」

「……え?…あの…黒埼君の事といい、それは言わないといけない事でしょうか」

戸惑いながらも少し強い口調になった。

「いや、そんな事はない。すまない、出来たら知りたいんだ。…確認したい」

確認?何の為の確認?

…。

「私はもう8年越しの恋をしている。いや、厳密に言えば10年以上だ」

それはあのときの、部長がひた隠しにしているという人のことだろうか。自分の事を話して聞き出すつもりなのね。…はぁ。仕方ないのかな…。

「私は…人を好きになる気持ちが止まったのは3年半くらい前です。でも、暫くは多分、その終わった人のことを思っていました。それが未練ではなく、まだ恋していたというのなら、終わった人に…恋はしていました。それほど素敵な人でしたから。やっぱり未練…ですね。だから明確には何年していないとは言えませんね。2年ちょっとくらいになるのかな…はぁ、解りません…」

「もういい。今は恋愛はしてないんだね?」

あ、それは…黒埼君への微妙な思いは、恋愛とは言わないのか…。

「はい、恋愛は、してないです」
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