あの日みた月を君も
episode-2
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秋が終わり、いつの間にか厚手のコートが必要になる季節に突入した。

時間だけが刻々と過ぎていき、僕とアユミの関係はずっと平行線のまま。

アユミがあの時言ってたお見合いをしたのかどうかも、聞くことすらできなかった。

というか、とにかく僕たちは今、卒論に明け暮れて、二人でゆっくりと話をする時間もない。

毎晩遅くまで研究室にこもっていた。

いつも僕が最後まで残っていて、いつの間にか教授から鍵を渡されるまでになっている。

そこまで信用してもらえるのはありがたいけれど、単に僕の作業がもたついているだけなのかもしれない。

あまり格好のいいことではなかった。

「お先でーす。」

次々と研究室から人気がなくなる。

最後の人間は、僕と、久しぶりにアユミが残っていた。

「今日は遅いんだね。」

そう言いながら時計をみやると、もう22時を過ぎていた。

「今佳境なの。」

アユミはレポート用紙に必死にかじりつきながら、こちらを見ずに答えた。

「帰りの電車は大丈夫?」

おせっかいかなとも思ったけれど、尋ねる。

「そうね。あと15分ほどで切り上げるわ。」

「じゃ、僕もそれくらいに帰るよ。」

二人で研究室から帰るのもとても久しぶりだ。

論文作成の疲れはあったが、それだけで気持ちが随分高揚していた。

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