愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「さあ、行こう。綺麗になった君を見せびらかして、俺たちの関係を認めてもらう。今日のルールは簡単。自信を持って、堂々と婚約者を演じきること」

ふと我に返り、彼の胸から顔を上げた。

「そうよ。本物じゃない。……演じきらないと」

彼を好きになったら割れてしまう、ガラス細工のような関係。
私たちは、それ以上でもそれ以下でもない。

「先ほどの麗子さんのように、今夜はいろんな話が耳に入って、君は混乱するかもしれない。だけど仕方がないんだ。これが俺の生きる世界だから」

彼は自嘲気味に話しながら、苦笑いをする。

「俺の失脚を願う者や、結婚によって経営権を狙う者。恥ずかしながら、一族やグループ会社の中に、そういう人がたくさんいるんだ。派閥もあるから、ややこしいんだよね」

その肩に背負っているあらゆるものに押しつぶされ、奏多さんはさぞかし苦しいだろう。藁をも掴む思いで、私に助けを求めたのだ。

「油断すると取り返しのつかないことになる可能性もある。気が抜けないんだ。常に相手を疑いながら話してる。君にとっては、信じられないことかもしれないが」

今の私ができることは、彼を少しでも楽にしてあげることだ。

「任せて。田舎の女は、噂話なんて聞き慣れてる。あなたに群がる女性たちを、徹底的に追い払うから」

腰に手を当て、もう片方の手でガッツポーズをしながら言うと、彼は私を見ながら大笑いした。

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