愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
彼らはお互いの顔を見合わせ、大げさに頷き合う。

奏多さんの話は本当だった。
結婚が自分の意思でできないなんて。
会社にとってのメリットで考えるなんて。
この人たちは、奏多さんの人生をなんだと思っているのだろう。普通じゃない。

『言いたいことはそれだけですか』

そのとき、奏多さんが彼に向かってマイク越しに言った。
拍手が止まり、皆の視線が奏多さんへと移る。

『あなたに認めていただかなくても構わない。俺もあなたを認めなければ済む話だ』

低い声でそう話す彼を見上げる。
彼は周囲を見渡しながら、はっきりとした口調で言い放つ。

『今まであなた方の言い分は、ある程度聞いてきた。だが今回ばかりは、俺の思った通りにさせていただく。杉田社長。前言撤回するならば今しかないが、どうされますか』

睨むようにその男性を見る奏多さんは、CEOとしての顔になっている。

『ご意見を変えるつもりがないならば、あなたには今すぐに、ご退場いただこう。同時に御社との契約は、今日で切らせていただく。彼女を認めないならば、あなたは月島の名を語ることはできない。もちろん、途中解約の違約金はお支払いします』

会場が、凍りついたように静まり返る。

「まっ待ってください。私はただ、今後のグループのことが心配だったので__」

『あなたにご心配いただかなくてもいい。グループの未来を案じるのは俺の役目だ。杉田社長。ご自分の立場をおわかりですか。あなたが俺に意見するということは、御社の今後に大きく影響することを』

誰一人、口を開く者はいない。
私も、驚きながら彼を見たまま黙った。

『今さらだが、覚えておかれたらいい。会社を運営しているのは俺なのだと』

私をお姫さまのような気分にさせてくれる彼と、グループの人々に厳しい顔を見せる彼が、頭の中で重ならない。


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