愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
私たちがそんなやり取りをしているうちに、会場には軽やかな音楽が流れ始め、人々がぞろぞろと移動を始めていた。

中には私たちを見たまま、立ちすくんでいる人もいたが、先ほどの奏多さんの態度を見たせいか、なにも言ってはこない。

「お前はすぐにそういうことを言う。瑠衣はダメだよ。俺のだから」

奏多さんが顔を歪める。

「そんな必死になるなって。社交辞令だよ。本当に瑠衣さんが好きなんだな。面白すぎ」

「そういうことじゃないだろ」

龍さんは、そんな奏多さんをからかうような口調だ。

ふたりの会話を聞きながら、私はどんな顔をしたらよいのか、わからなくなっていた。

そのとき、ふと強い視線を感じ、ふたりから目を逸らして、後ろを見た。

「なっ……?」

階段の横に立ち、私を睨むように見ている男性。
彼を見間違えるはずなどない。

小さな頃から、いつもそばにある顔なのだから。

「海斗……。なぜ」

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