愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～

「君は瑠衣を好きではないんだろう？彼女からは、嫌々だと聞いている」

奏多さんが言うと、海斗は静かに話しだした。

「自然しかない、山あいの土地で……俺はいつも瑠衣と一緒にいました。結婚するのだと親に言われたとき、驚くほどに自然とそれを受け入れた」

私と奏多さんは、黙って海斗の話を聞いた。
目の前で語る彼が、まるで今まで一緒にいた海斗ではないような気持ちだった。
私たちはそれほどまでに、お互いの本音を話さなかった。
当たり前の日常の中にある彼の存在が近すぎて、その機会を逃していたのだ。

「瑠衣は成長するにつれて綺麗になっていく。そんな彼女を誰かにさらわれるのが嫌で、ほかの人を好きになろうと必死になった。だけどいつも、瑠衣のことを見ていました」

私は両手で口を押さえた。
まったく気づけなかった彼の本心を、初めて知る。

「……だから彼女に近づく男を排除したんだね」

奏多さんを見る。
排除？どういう意味か、よくわからない。

「君に恋愛経験がないだなんて聞いて、誰かが邪魔をしているような気がしたんだ。君は可愛いし、男が放ってはおかないだろうってね」

奏多さんに言われ、さらに驚く。
ずっと自信がなかった。
周りの女の子が当たり前に愛されるのに、私にだけ王子様は現れなかったのだから。