愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~

「それなら初めからそう言ってくれたら__」

私が言うと、海斗は私を睨んだ。

「瑠衣が俺を好きじゃないことはわかってた。土地の呪縛から逃れる勇気がないことも。俺が好きだなんて言ったら、お前は逃げだすに決まってるだろ」

絞るような声で話す海斗を初めて見た。
いつも自信家で、私を斜め上から見下ろす彼しか知らない。

「気のないフリをして、成り行きに任せるつもりだったんだ。結婚してから気持ちを告げようと決めていたから。ずっと瑠衣のそばで、お前を見張っていたのに。まさか、こんなことに」

海斗はずっと私を想ってくれていた。
だけど私は、彼と同じ気持ちにはなれない。それだけははっきりとしている。

言葉を探して黙る。
どう言ったら、海斗をできるだけ傷つけずに済むだろう。それは不可能なことなのに、必死で考える。

「そうか、やっぱりね。長澤くん。そんな方法じゃ、瑠衣を何年想っても、彼女は振り向いてはくれないよ。君は彼女に拒絶されるのが怖くて、ずっと逃げてきた。それなのに、都合よく彼女を欲しがってる」

奏多さんが真剣な顔で海斗に話す。

「肝心なことを伝えないで、成り行きで彼女が手中に収まるのを待っていた。瑠衣の気持ちなどはお構いなしで、自分の欲望だけを優先してきたんだ」







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