愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
海斗がそんな奏多さんに向かって、声を張り上げた。

「そんなつもりはなかったんです。俺は自分の気持ちには正直に向き合ってきました。瑠衣と結婚するつもりで、ずっと生きてきたので」

「君はわかっていない。瑠衣が幸せになれる条件は、君を好きになることだ。独りよがりな愛情は、彼女を不幸にする。たとえ君が、どれだけ瑠衣を好きでもね」

奏多さんは、隣にいる私を見下ろした。

「君の幸せは、君自身がつくるものだ。彼に色々言われながらも、離れるきっかけがなくて一緒に過ごしてきた日々は、瑠衣を幸せにはしなかった。だけど、彼の気持ちを知った今、君はどうしたい?」

奏多さんに尋ねられて、彼の目を見つめ返す。
嘘で固められている、私と奏多さんの関係は、本当ならばここで終わらせたほうがいいものだ。

私たちに、ふたりで手を取り合って歩く未来はない。
いつか必ず訪れる別れを、無傷で受け入れられるはずなどないのだから。

「私は……」

「瑠衣が長澤くんに戻るならば、俺は君を追わない。ここからは君が決めていいんだ。君の人生だからね」

奏多さんはそう言って、極上の笑顔をみせる。




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