愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「わかった……完敗だな」
私はわかっていた。海斗ならば、食い下がるようなことはしないと。
いつだって堂々としていて、自信を持っている。
奏多さんのような人に、盾突くような真似はしない。
だからこそ、彼との関係を変えるには、奏多さんが必要だった。
「瑠衣。嬉しいよ。生涯をかけて、君を大切にするから」
奏多さんに言われ、彼を見上げて微笑む。
嘘しかない、甘い愛の囁き。
それでも私にとっては、夢見るような幸せだ。
奏多さんと離れたときに、海斗がほくそ笑む顔が頭に浮かぶ。
『やっぱりバカだな、お前は。初めからわかれよ。月島CEOみたいな人にとって、お前なんかはただの遊びに決まってるだろうが』
そのときの海斗の台詞までもがわかってしまう。
それほどまでに、私たちは親密だ。
だけどもう、海斗は私のそばからいなくなる。
後悔したりはしない。
自分が選んだことなのだから。
「長澤くん、本当にすまない。君の存在を知っていながら、瑠衣を愛してしまった。彼女がいないと……俺はこの先を歩いてはいけないから」
奏多さんの嘘が上手すぎて、私はまたしても、頭がぼんやりとしてくる。
私を見つめるその艶やかな視線が、本物だったらいいのにと、心から願ってしまう。