愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～
海斗はなにも言わずに、私たちに背中を向けると、出口に向かって歩きだした。

結婚することは考えられなかったけど、彼はこれからも私にとってなくてはならない存在であることは変わらない。

「海斗。土下座は勘弁してあげるわ」

私が彼に向かって言うと、彼はゆっくりと振り返った。

「バカ。調子に乗るなよ。初めからそんなことをするつもりなんか、ないんだよ」

いつもの睨むような視線と、意地悪な言い方。
悔しいはずなのに、少し安堵する。

「バカは海斗でしょ。悔しかったら、あなたも早く彼女をつくりなさいよ」

「お前に心配なんかされなくても、俺はお前と違ってモテるんだよ。彼女候補が列をなして待ってるからな」

いつもと変わりないやり取り。
つぎにこうして言い合うのは、いつになるだろうか。

「いつも大げさなのよ。そう思っているのは自分だけだと、早く気づけたらいいわね」

「自意識過剰はお前のほうだ。今に痛い目に遭うからな」

そこまで言うと、彼は再び前を向いて歩きだした。
振り返らずに、軽く片手を上げてから会場を去っていく。

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