愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「妬けちゃうなぁ。彼は瑠衣に、そんな顔をさせちゃうんだ」

海斗の背中を見送る私に、奏多さんが言う。

「え……?」

気づけば、私の目からは涙がこぼれ落ちていた。

「……大丈夫?よかったの?」

奏多さんが心配そうに尋ねてくる。

「いいの。奏多さんがいてよかった。海斗と言い争うことがなかったから。彼、本当にプライドが高いから、私だけだと納得しなかったわ」

涙を手のひらで拭いながら、奏多さんを見上げる。
無理に笑う私を、奏多さんはそっと抱き寄せた。

彼の胸に包まれ、私は目を閉じる。
この温もりが偽りであっても、私は奏多さんを求める。
そんな自分を、抑えきれない。

「無理しないで。悲しいなら、泣いていいから」

耳を掠める優しい声。
ずっと聞いていたい。
この先も、あなたを好きでいられるのなら、なんだってするのに。

どうして私たちは、本心すら言えないんだろう。

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