愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「ねえ。踊ろうか。少しは仲のいい様子を見せておかないと。フロアの中央に行けば目立つからね」
彼が私を抱く手の力を緩め、私の目を見る。
「踊る?無理よ。できないわ」
「いいよ、上手くなくても。俺がリードするから」
私の手をそっと握ると、彼はダンスフロアへと歩きだす。
「奏多さん。無理だってば」
私の声に反応せずに、彼はずんずんと進んでいく。
私たちの行く手にいた人たちが、さっと脇に逸れ、私と奏多さんは、ダンスフロアの中央に立って向かい合った。
周囲からの視線が、私たちに集まっている。
「無理だと言ってるのに。後悔するわよ。あなたも一緒に恥をかくんだから。転んでしまうかもよ?」
小声で抗議する。
「君が転びそうになったら、身体ごと抱き上げるから大丈夫だ。そうなった場合、ショーとしてはキスでもしたほうがいいかな。そしたら誰も、俺たちの関係を見破れない」
彼の返事に、私は驚いてなにも言えない。
そんな私の反応を楽しむように、彼はニヤリと笑う。
「君が俺の花嫁なんだと見せつけないとね。なんと言っても君は、俺が決めた最愛の女性なのだから」