愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
そのとき、隅のほうで演奏していた楽団が急に曲調を変えた。
軽やかなワルツが会場に響く。

奏多さんは私に軽く頷くと、ステップを踏み出した。

「えっ」

私の身体はふわりと彼に寄せられ、彼のリードでダンスが始まる。

「うわっ……きゃ」

くるくると身体を回され、私は彼のあやつり人形のように動いた。

「待って、待って」

「あはは。そうそう。上手いじゃない」

彼は楽しそうに笑う。

「奏多さんが勝手に回してるんでしょ。目が回る〜」

私は必死になって彼の動きに合わせようとした。

「一点を見て。そうそう。なかなかいいよ。わははは」

「いいって言いながら、笑ってるじゃない」

そう言いながらも、私も次第に楽しくなってきた。
運動神経は悪くはないと自分では思っている。
もしかしたらダンスの素質があるのかもしれない。そんなことまで考えた。

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