真夜中メリーゴーランド


「で、なに買ってきたの?」

「……クリームパン」

「え、晴太甘いの苦手じゃなかったけ」

「これしかなかったんだよ!」


杏果と晴太の会話を聞いていると、自然と笑えてくる。朝からあまりいい気分じゃなかったけれど、いつもどおりのふたりを見てなんだかホッとした。まあ、いつも騒がしいのは勘弁してほしいけどね。

ふと杏果と晴太から視線をそらす。私たちの斜め反対側で談笑しながらお弁当を食べる男子グループが目に入った。その中には雨夜の姿もある。

ほかの男子たちがバカ騒ぎをしている中、雨夜はそれを見て静かに笑っているだけ。基本自分から声を出すことはない。そういうところが、ほかの男子よりも大人びていてクールでカッコいい、と言われる要因なんだろう。

こうしてまじまじと彼を見ると、確かに女の子たちに騒がれる理由はよくわかる。
今日の夢のこと、頭のどこかでずっとモヤモヤしている。気にしたくないけれど、こうして雨夜のことを気にしてしまう自分がいるし。


「つうか、那月どうした? 今日なんか静かじゃね?」


晴太が突然そう言って私の顔をのぞき込んだので、考えていたことがバレてしまったんじゃないかと思ってドキリとした。

雨夜から視線をはずして、那月と晴太のほうへと向きなおる。


「そんなことないよ」

「本当かよ?」

「うーん、しいて言うなら変な夢を見たから、かな」

「変な夢?」

「うん、なんか真っ白な空間に、ひとりでぽつんと立ってるの」


杏果が「なにそれ、怖い」と身震いしたのと同時に、晴太が「たかが夢だろー」と笑いとばす。そう、たかが夢の話だ。それにもしかしたら、あの時見た人物は雨夜じゃなかったかもしれない。朝より記憶が薄れているせいか、そんな気もする。


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