人間複製機
スッと息を吸い込んで、箱を開けた……。


そこには2本のペンが入っていた。


取り出してみると片方は熱を持っていて、もう片方は冷たい。


比べてみるとインクの減り方や、側面につていた傷が全く同じように再現されている。


ノートに文字を書いてみると、複製された方もちゃんと香りがついていた。


あたしは大きく息を吐き出して箱を見つめた。


これは本物だ。


ようやくそう気が付いて、唖然としてしまう。


「これで信じた?」


弘樹の言葉にあたしは小さく頷いた。


「お金もこれで複製させたんだ。誰も、機械ですらも偽物だと判別がつかなかった」


確かに、ここまで精密に複製されたなら気が付かないだろう。

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