愛しのエマ【完】

「来日の予定はないんですか?」

「準備はしているのですが、時間が必要なのです」

私の質問にしょんぼり答える副社長。
日本は遠いから
決心するのに迷うよね。

恋人と離れて
寂しいんだよね。

ずーっとあっちで過ごしてたんでしょう。
後継者はお兄さんがいるからって
安心して暮らしてたのに
急に呼び戻されて気の毒。
御曹司って大変だね。

「奈緒さんに会って、晴天のへきれきでした」

その使い方はどうかと思うけど
驚きは伝わりました。

「ありがとう奈緒さん。もう一度ハグしていい?」

「えっ?」

返事をする前に副社長は素早く動き
ソファに座る私を抱きしめる。

「副社長」

「愛してるエマ」

ほっぺたスリスリはマズいでしょう。
密着しすぎでしょう。

ちょっとこれはヤバい。

「ごっ、ごちそうさまでした!」

私はゴージャスな副社長室から逃げ出した。

もうダメだ
密着しすぎです
心臓に悪い
高級うな重に釣られた私が悪かった。

もう関わりたくないっ!



けど

運命は転がる。



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