愛しのエマ【完】

「いや……いいです」
身体が崩れそう
こんな高い服なんてもらえない。

「どうして?」

「エマさんにプレゼントじゃないんですか?」
声が裏返る私。

「エマはオーダーメイドしか着ないから」

エマさんもどんだけ金持ち?
いや無理です。
こんな高い服ダメです。

「奈緒さんに僕は迷惑かけてる」
急にしょぼんとする副社長。

「かけてませんよ」
30万もらってるし
高いランチ食べさせてもらってるし。

「奈緒さんの喜ぶ顔が見たくて」

やめて
そんな悲しそうな
寂しそうな顔をしないで
イケメンがそんな顔すると
余計に悲壮感が漂って
私が悪い事してるみたいでしょう。

「受け取って」

真剣に言われて言葉に詰まる私。

事務員と副社長
こんな事はダメでしょう
いくら貧乏な私でもこれはダメです。

でも……でも
あぁそんな悲しい顔をしないでほしい。

「……ありがとうございます」

高い服に負けたのではない
副社長の悲しい顔に負けました。
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