愛しのエマ【完】



 次の週の木曜日。

エマさんが会社にやってくる日。

私が副社長室を去る日。

制服の中に
副社長から買ってもらったブラウスを初めて着る。

高いだけあって着心地が違う。
軽くて動きやすい。
さすがだな。

副社長室の前で深呼吸。

もうきっと
エマさんと副社長は中に居る。

今日で最後。
エマさんにご挨拶してから
すぐ総務に戻ろう。

エマさん
副社長が愛するエマさん。

写真の中で
副社長に抱きついていたエマさん。

よかったね。
あぁ涙目になりそう。

ダメダメ。
笑顔でお世話になりましたって
ご挨拶しなきゃ。
美味しいランチも食べたし
ブラウスもバッグも買ってもらった
30万も助かった。

もう一度 深呼吸。

扉の向こうから副社長のはしゃいだ声が聞こえた。

こんな声
初めてかもしれない。
エマさんの名前を連呼している。

早く終わらせよう。

私は扉をノックして
部屋に入ると……。

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