愛しのエマ【完】
エマさんが……いない。
ん?あれ?
エマさんはいずこ?
「あ、おはよう奈緒さん」
満面の笑みで
副社長は自分の足元を気にしている。
「あの……エマさんは?」
「いるよ。エマご挨拶して」
副社長は足元に手を伸ばし
一匹の小型犬を抱き上げる。
犬?
「もう可愛くて可愛くて。僕のエマです、奈緒さんよろしくね」
副社長はチワワらしき小型犬を抱き、私の傍に来る。
犬?犬ですよね。
驚いて言葉もでない私を見て
副社長はこらえきれないように爆笑。
「僕の父親もカン違いしていて、もしかしたらって思ってたら、やっぱり奈緒さんもエマが人間と思ってました?」
「だって彼女って」
「女の子ですよエマは」
「大学で知り合ったって」
「友人がエマをバスケットに入れて連れて来たんですよ。まだ小さくて可愛かったな」
「デスクの上の写真に」
「写ってますよ、ほら」
片手で机の上の写真を持ち上げ
私に渡すのでチェックすると
たしかに
写ってる。
大型犬と一緒に
エマさんが
チワワのエマさんが副社長の足元に座ってる。