愛しのエマ【完】
「少し離れていたので日本語が下手ですが、お許し下さい。みなさんよろしくお願いします」
副社長は回りを見渡しそう言って
常務の元に戻り
総務課を出て行った。
嵐のような数分間。
まだボーッとしてしまう。
「奈緒ちゃん!うらやましい」
「いきなりの副社長にハグ」
「いいなぁ。うらやましい」
みんなに言われたけれど
冗談じゃない。
急に知らない人に
みんなの前で抱きつかれるって
怖かったよー。
いい匂いだったけど。
「人違いだよ。エマさんって恋人かな」
「やっぱり恋人いるよね」
「でもその外人の恋人が、奈緒ちゃんに似てるのかな?」
別の意味で女子社員達にガン見される私。
背は低めで童顔。
髪は黒のショートボブ。
どこから見ても
純国産の日本人。
妙に気まずい空気が流れ
何事もなかったように
苦笑いしてみんな席に着いて仕事の続きに戻る。
エマさんが日本人っぽいのかな。
副社長
切ない顔してた。
愛しい子って言ってた
そんなに好きな人がいるんだ。