アウト*サイダー

「大丈夫。俺、居るよ」

 いつもの掴み所のない笑顔。鼻に詰め込まれたティッシュがそのままだ。癖っ毛から覗くおでこは少しだけ赤みを帯びている。

 私のベストを掴んでいるのは確かにケイなのに、実際には私がケイを掴んで離さないようにしてしまっているのかもしれない。

 普通、人前に出るからティッシュ外さない? とか、あんな身勝手で横暴な言葉なんか受け流さない? とか、言いたいことはある。でも、そのどれも大した意味を持たない。

 彼にとって、私が求めるものが全てなら。

 私は彼の手をベストから離させる。一瞬、抵抗するように力が加わったけど、すぐに力が抜けた。

 ケイの顔を見上げてみる。

 十センチくらいか、それ以上の差があるだろうか。さっきまでそれほど違わない目線でいたから、少し違和感を感じる。

 それに、何も言わないでいる私にケイのちょっとだけ不安そうな顔が“変”。だって、見下ろされてるのは私なのに。

 …………全部、変だ。
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