アウト*サイダー

 離した手をもう一度取って私は歩きだす。ケイは何も言わず、握った私の手を遠慮がちに握り返した。

 やっぱり、変なの。

 前は遠慮なく繋いできたくせに。

 自分の教室もケイの教室も、通り過ぎる。ケイは大人しくついてきている。

 階段を降りて一階まで来ると、生徒の数はぐんと減る。蛍光灯の明かりが弱くて、外の光がすごく眩しい。

 人通りの少ない廊下を歩いていき、目当ての場所で足を止める。一応ノックして引き戸を引いた。

 鼻を掠める消毒液の匂いにちょっと嫌になりながら、中に入って人を探す。しかし、保健室の先生も、生徒の姿も誰も見当たらない。

 いつもは誰かしら居るのだけど、ベッドで昼寝するヤンキーだっていないようだ。

 仕方がない、と手近にあった椅子にケイを座らせて、辺りを物色させてもらう。冷蔵庫を見つけて、保冷剤を取り出す。貸出簿があったのでそこに名前を書いておく。

 ふと、顔を上げるとケイと目が合った。ずっと、見てたんだろうか。……うん、見てたんだろうね。
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