アウト*サイダー

 暫く、薄暗い保健室で見つめ合い続けていた。 
 この奇妙に流れる時間を言葉には言い表せない。

 もしかすると、今の私が思い付かないだけか、はたまた未来の私だって同じなのか。

 保冷剤を直で触っている手が痛くなってきた。

 彼の所に戻って椅子を寄せて腰かけ、ハンカチで包んだ保冷剤をケイの赤くなったおでこにあてがう。ついでに、鼻のティッシュも抜いてあげる。

「はは、息がしやすくなった」

 くぐもっていた声が元に戻った。

「だろうね」

 少しだけ遠い所にあったゴミ箱へティッシュを投げ入れる。一発で入った。

「うん。それに、冷たくて気持ちいい」

 彼は軽く目を閉じて言った。

「そりゃ、良かった」

 私は彼の長い睫毛の一本一本の隙間を見ながら呟く。

「俺と付き合おっか」

 瞼を開けた彼のその瞳の中に私を見つけた。

「どさくさに紛れようとすな」

 私はそれから目を背けた。

「……何のこと?」

 わざとらしい、とぼけた顔にイライラする。
< 113 / 466 >

この作品をシェア

pagetop