シンシアリー
「・・こいつを“首切り”に仕立てるか・・いや待て。ここで“犯人”を殺してしまうと、もう次の犯行ができなくなるじゃないか。僕だってそれくらいの知恵は働くんだ。・・・おまえも愚かだな。まさか、僕が練習用ではなく、本物の、切れ味抜群の剣で手合わせしていたことに気づかないんだから」

セイヴィアーの死体を見ながらブツブツ呟いていたヘルメースは、セイヴィアーの腕を軽く一蹴りした。
そのとき、上空から水滴がポト、ポトと落ちてきた。

「ん?・・・雨か。・・ははっ。ハハハッ。アハハハ・・・!」

雨はすぐに勢いを増して、本格的に降り始めた。
剣を持ったまま、顔を上げたヘルメースは、暗い夜空に向かって、暫く笑い続けていた―――。

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