シンシアリー
「僕に気安く触るなっ。姉の分際で・・」
「・・・あなた、ジンの飲み過ぎよ」

ヘルメースから漂うアルコール臭に、レティシアは思わず顔をしかめた。
そして、ヘルメースから退こうと半歩下がろうとしたが、ヘルメースはレティシアの手首あたりをグッと掴んだ。
痛さにレティシアが顔をしかめた。しかし逆にそれが嬉しいのか。ヘルメースはニヤニヤ笑っている。
「痛い」と認めると負けるような気がしたレティシアは、何も言い返すことなく、ヘルメースを睨み上げた。

「そんなになるまで飲むことないでしょう?」
「うるさいなぁ。今までずうーっと寝込んでたんだから・・飲まなきゃ眠れないんだよ。僕は、単独で外出しちゃいけないから?そんな退屈な夜は、寝て時間を潰すしかないだろ・・・お。そーだ!おまえ、これから僕と一緒に出かけるんだ!それなら僕は“単独で”出かけることにはならないじゃないかー」

ヘルメースが「賢いなぁ、僕」と自分で自分を“褒めて”いるとき、レティシアの手首を掴んでいる手が緩んだ。
その隙に、レティシアはすかさずヘルメースの手から逃れた。


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