シンシアリー
「その後、表向きには国王様の体調は悪化する一方で、食欲も衰え、顔色も悪くなり、医者にも見放されてしまった、ということにしておきましたが、解毒剤を飲まれていた国王様は、本当は快方に向かっていました。徐々にですが。もし発見がもう少し遅かったら、解毒剤を飲んでも効かなかったでしょう。それだけ事は深刻だったのです。ですから、私たちはこのことを、ごく限られた人だけが知っておくように留めておきました。コンスタンティン国王と、私、そして私の護衛騎士・ユーグの3人だけです。証拠を集めるため、そして国王様が先ほど仰ったように、私たちの、いえ、特に国王様の身を守るために。その時点で“犯人”はまだ確定していませんでしたし、犯人の仲間が何人いるかのも把握できていませんでしたから、事を極秘に進める必要があったのです。イリーナには、レモネードを飲まずに捨てることは口止めし、今後もこれまでどおりに振る舞うよう、指示をしました。因みに、レモネードに毒が入っていたことは、イリーナにも言いませんでした。あの子は、とても純粋な心の持ち主で、それ故にいくら正当な理由があろうとも、人を騙すことが下手というか・・すぐ顔の表情と態度に出てしまいますから。逆に私は、その純粋さを利用してしまいました。一番多く国王様のお世話をしているイリーナが、国王様が今にもお亡くなりになりそうだと信じきっていれば、周囲もその嘘を信じると、私は見越していたのです。だから・・イリーナには申し訳ないことをしてしまったと思っています」
「それなら僕だって同罪だ。イリーナには後で謝ろう」
「はい」とレティシアは言って頷いた。

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