君の彼女を僕にください
「聖也!!」
女性のお客さんのうちの1人が、聖也を呼ぶ。
近づいていく聖也は、すごく仲良さそうに話していた。
淡い栗色の髪を耳元で結び、決して派手じゃないんだけど、薄めにメイクした姿が、凄く上品な雰囲気で素敵だった。
誰だろう?
聖也のあんな笑顔、見たことないかも……
少しだけモヤモヤする。
なんだろうこの感じ……。
聖也の事なんて、好きでもなんとも無いのに。
「気になる?」
意味深な笑顔を向ける杏。
「いっ、いや……別に……」
「あっ、そう。じゃあ、誰だか知らなくてもいいよね」
そう言って教室に入ると、その人達の和に入っていく。
……イジワル。
杏も知ってる人なんだよね。
どう頑張っても分かる訳なくて、しかめっ面をしてると、
「そんなに気になるなら、素直に聞けば良かったのに」
そんな正論を、淡々とお金を数えながら言われた私。
稜の冷静さは、たまにすごいなと思うことがある。
花道でつちかった腹の座り方だよね。
「べ……別に、聖也の事なんて気にならないし!!」
そう言って振り返った瞬間、
ーーーードンッ!!
振り向きざまに、誰かとぶつかってしまった。
そりゃそうだよね、周りも見ずに歩きだそうとしてるんだから。
お互いによろけてしまう。
「ご……ごめんなさい!!」
「こっちこそ!」
そう言って見上げた人は、琥太郎の入ってるサッカー部のキャプテンの慶先輩。
慶先輩は、とにかくモテる。
何って、サッカーをやってる時のかっこよさは天下一品で、琥太郎曰く
『かっこよくて優しくてサッカー上手くて、マジで神』
らしい。
ただ慶先輩、かなりの女好きって話もあって、いろんな噂も絶えないのは事実。
モテるから仕方ないのかな?