ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「やり方はわかるね」

「ええ」

頷いてミライの瞳を真正面から見つめた。いつもと変わらない笑顔で僕を見ているミライ。

「ミライ、セーフモードで再起動」

と声を掛けると、一瞬ピクンと動いた後、ミライが微笑みを浮かべた表情のままピタッと動かなくなった。と横からサッとミライの耳にケーブルを繋ぐ所長。

「よぉーし、まずはデータの抽出とコピーから始めよう。コピーしたデータの分析はクワン、君が指揮を取って取り掛かってくれるね。プログラムとの整合性は念入りにチェックをね。ブローカ領域はもちろん、使えるところは全部使うんだよ」

と矢継ぎ早に指示を出す所長。

「ミライのデータを何かに使うんですか?」

覗き込むように所長に尋ねた。

「ウン。二号機にね」

と所長が指差した先、機器類の棚の向こうにある鉄製の寝台の上に、まだ皮膚のついてない二号機が静かに横たわっていた。

「ようやく待ちに待ったこの時が来たよ。修正プログラムと新部品を組み込んで皮膚を被せて完成させる。ヒューマノイドの、より進化した完成形の誕生。管理者はクワンだ。彼女も張り切ってるよ。これでスムーズに次のステップへ繋げられる。それもこれもみーんな君のおかげなんだ。君を選んで大正解だったよ!」

と所長がニコニコと台の上に横たわる二号機を見つめた。周りでは研究員たちが活気に満ちた動きを見せていて、実験が新段階に入った事が目に見えてわかった。

(ミライのココロも進化していくんだな)

フツフツと湧いてくる期待感。

「さ、あとは任せて控え室に行こうか。コーヒーでも飲もう。インスタントだけどね」

と微笑む所長に連れられて、僕は控え室へと歩いた。
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