ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「僕達も帰ろうか」

と声を掛けて、頷いたミライを連れて外へ出て、後片付けを始めた学生達の間を通り抜けて校舎の裏へと回った。人込みはなくなったがミライがくっ付いたまま歩いてくる。

「ちょっとさむい」

可愛らしいミライの声。枯葉が舞うほどの風が吹きつけて来てる。

「早く帰ろう!」

ちょっと出し抜くように走り出してみた。と、ついて来れなかったミライの手がほどける。そのまま少し走ってから立ち止まって、振り返った。

「待ってよ~」

とはしゃぐように声をあげたミライが、走り寄って抱きついてきた。

「んもぉ~、イジワル」

とフクれておどけて見せるミライ。

(フッ…まるで恋人、だよな)

抱きついてきたミライの温もりが胸にじんわりと広がってくる。

「あったかい」

胸に顔をうずめてくるミライ。温もりが体に染み込んでくるようだ。

「うん」

込み上げてくるこの愛おしさはなんだろう。

(あったかい…)

思わずギュッと抱きしめた。腕の中で感じる温もりは、体だけじゃなく心までジーンと温めてくれる。この温もりがなかったら、ミライにここまで感情移入出来なかったかも知れない。ホント、よく出来てる。

(間違いなく、最高傑作ですよ)

所長に心からの賛辞を送りながら、ミライと一緒に部屋へと帰った。
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