ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 次の日の朝、携帯の呼出音で目が覚めた。ハッとソファから起きて携帯を取ると、表示された名前は広海君。

(何だ?こんな朝っぱらから)

訝しげに思いながら携帯に出ると、画面に思いっきりしかめっ面の広海君が映った。

「先生っ、何してるのよ!」

え、何してるのよって、

「今起きたばかりだけど…」

頭を掻きながら答えると、広海君の怒声が飛んできた。

「早くテレビ見て!見たらすぐ大学に来てっ!」

と、ブツッと一方的に電話が切れた。

「な、何だ?」

怪訝に思いながら、言われるままテレビをつけた。と、ニュースの中継画面に見覚えのあるコンクリート造りのビルが映っていた。

「あれっ、所長の研究所…」

と、画面に資料片手にマイクを握り締めた記者が映った。

「…こちらに見えますのが、衝突された車に同乗していた女性が勤務していた研究所です」

えっ、衝突?同乗していた女性?

「調べによりますと、昨夜の事故の際、衝突された車はこの研究所で開発されたロボットが運転していたと見られ、同乗していた女性研究員が意識不明の重体である為、本日未明にかけてこちらの研究所において警察が事情を聴取したものと」

何だってーっ!!!

「これ、クワンとロイの事か!」

ロイが車を運転して、衝突事故に遭ってクワンが意識不明、で研究所が警察に事情聴取されて、

「しかもそれがテレビで放送されてる…」

なんて事だ。それじゃ、何もかも台無しじゃないか!

「ミライ、急いで大学に行こうっ」

大急ぎで身支度をしてミライを連れて、部屋を飛び出した。
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