ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「そういう条件だったんだよ。所長との約束でさ、ミライの正体が外にバレないようにって、そう教授も」

とふと見ると、後ろで教授がブンブンと手と首を振っていた。

(…)

こんな時に自分に振るなって事ですか教授っ。と、広海君が僕の手をバッと払って目尻を吊り上げた。

「私が外へバラすって思ってたのねっ!」

シマッタな、これじゃ火に油だよ。

「先生は私とずっと一緒に研究してきたんじゃないの?それでも私ってそんなに信用ないワケ?私の事ずっとそんな風に思ってたワケ?ねぇっ!」

潤んだ目で訴える広海君の心の叫びに、何と答えたらいいのかわからなかった。

「そ、そんな風には思ってないよ」

そう首を振って返すのが精一杯。

「じゃあ何で正直に話してくれなかったのよ!」

…怒りたくなるのももっともだよなぁ。と、横からミライがスッと僕の前に出て広海君の手を取った。

「ごめんなさい広海さん、先生を責めないで。先生は、所長に言われた通りの事をしてただけ。先生は悪くないの。許してあげて」

と僕を擁護してくれるミライ。と、広海君がその手をパッと払った。

「どうしてよ!先生は私を放っておいて、あなたとの実験を選んだのよ!私の気持ちは実験以下だって言ってるのよっ。許せるわけないじゃない」

と口を真一文字に結ぶ広海君。そりゃあそう言いたくなるよなぁ。と、ミライが今度は両手で広海君の手を掴んだ。

「違うわ。私の実験は、先生にとっては仕事なのよ。先生の気持ちとは違うの。あなただってそれはわかってる筈よ」

と広海君に訴えかけるミライ。いい事を言ってくれる。と、聞いた広海君がプイッと一旦横を向いた。
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