ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「何よ、わかったようなコト言って。だからって、先生が私を騙し続けてた事に変わりはないじゃない!そうでしょ先生!」

とジロッと僕を睨んでくる広海君。

(…ん、まあ、)

そういうコトになるかな。

「済まないって思ってる」

でも、わかってくれ。

「それが実験の条件だったんだ。仕方なかったんだ。嘘ついた事は謝るよ、な、この通り」

両手を合わせて頭を下げた。僕の立場もわかってくれ広海君。

「何よ今さらっ、んもうっ!」

と手をギュッと握り締めて地団駄を踏む広海君。

(マズイな)

かなり気が立ってる…。

「落ち着いてくれ、な、落ち着いて、僕の話を聞いてくれないか」

窺うように話しかけた。

「冗談じゃないわよっ」

と、広海君が首を振ってジッと睨み上げてきた。

「聞きたくない。先生の言う事なんか、もう何も聞きたくないわよっ!」

と僕を押しのけて廊下への扉に手を掛ける広海君。

「先生なんか大ッ嫌い!」

と、バタンッと豪快に音を響かせて廊下へ出て行ってしまった。

「…」

追いかけたところで、何と声を掛ければいいんだろう。

(…こんな事になるなんて)

あぁ。せっかく時間を掛けて積み上げた積み木が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた感じ…。
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