ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「少し急な展開だったな」

と、教授が呟くように声を掛けてきた。振り向くと、教授が机の向こうに回りこんで椅子にドッカリと腰掛けて、僕を見上げてきた。

「外部からの情報で気付いたとなると、ミライ君の正体に気付いた時の反応の観察としては、イマイチだな」

って、この期に及んで観察の方を気にしてるんですか教授。

(少しは僕の気持ちも汲んでくださいよ)

そもそも教授や所長が言ったから広海君に嘘をついて、こうなったんじゃないですか。

(広海君、怒って飛び出して行ったじゃないですか)

どうしてくれるんですか。

「大丈夫でしょうか広海君。このまま放っておいても」

居ても立ってもいられませんよ。

「大丈夫だろう。これで心折れてしまうようなヤワなハートじゃないだろう」

と余裕の笑みを見せる教授。

(…)

それはまあ、確かに。

「それより気がかりなのは所長だよ。私もさっき電話を掛けてみたんだが、一向に繋がる気配が無い」

あっ、そういえばそうだ。昨日の夜から研究所は大変な事になってる筈だし。確かに気にはなる。
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