ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「…虹彩登録。確認しました。続いて音声登録に入ります。どうぞ」

音声登録?どうするんだろ?と戸惑っていると、後ろから所長が声を掛けてきた。

「五十音を順番に言うんだ。ゆっくりね」

なるほど。咳払いを一つして、喉を整えて構えた。

「あ、い、う、…」

小学校以来の経験は意外と恥ずかしかったりする。ちょっと上を見上げて、五十音をすべて言った。

「音声登録。確認しました。続いて名称設定に入ります。管理者の名前をどうぞ」

「オオサワ タカシ」

「名称設定。確認しました。続いて、私の名前をどうぞ」

(えっ、彼女の名前?)

慌てて所長を振り返った。

「僕が名前を付けるんですか?」

そんな仕掛けなんですか?

「そうだよ。一応今までは『ミライ』って呼んでたんだけどね。好きな名前に変えて構わないよ」

と微笑んで返してくる所長。

(ミライ、か…)

これからの明るい『未来』を感じる語感は、いい感じ。

「そのままでいいかな」

ここの『近未来研究所』の名前も係ってることだし。

「ウン、じゃあ、彼女に向かって名付けてあげてよ」

と所長の声に、僕は向き直って『ミライ』と名前を呼んだ。
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