ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 吹き抜けの研究室と一面ガラス窓の壁で隔てられた、机が島になって並ぶ雑然とした控え室で、僕はようやくコーヒーをご馳走になった。

「確かにインスタントですね…」

カップを啜りながら皿に盛られたクッキーを頬張る。ふと顔を上げると、壁一面のガラス窓越しに、研究室の中で空っぽになった円筒形の台座の回りを数人の研究員たちが動き回っているのが見えた。

(そういや、どうするんだろう)

研究員たちはここの『メイン』がいなくなった後、何をするのだろう。

「所長、ミライがいなくなっ、…」

尋ねようと振り向いて驚いた。所長が子猫型のロボットを両手で大事そうに抱え上げて猫撫で声で話し掛けていて、しまいにはチューまでして喜んでいるじゃないか。

「な、何なんですか、それは」

所長たる人間が研究所の中で見せる姿とは思えませんけど…。

「え?知らない?アイ・ロボット。初期型だけど。ねぇ~ミーちゃん」

「ハ~イ」

と可愛らしい声で答えたミーちゃんを机の上に降ろして頭を撫でる所長。いやいや話が食い違ってますよ。

「それはわかります。こんなところで何をしてるんですか?」

と言ってる傍から猫じゃらしでミーちゃんとじゃれ合う所長。

「遊んであげてるんだよ。大事なスキンシップスキンシップ」

と所長が振り回す猫じゃらしを、ミーちゃんがエイッ、ミャーッと声を上げて追い掛け回していた。

「…」

ひょっとしてこんな事ばかりしてるんですか?

「で、何だい?何か聞きかけてなかった?」

と振り向いてくる所長。そうそう、そうでした。
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