ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 パジャマを着た風呂上りのミライが、ローテーブルの横のクッションにペタンと座り込んで、じっと僕を見ている。

(…参ったな)

とにかく何か話をしないと間が持たない。

(といって何から話し始めようか…)

大学で初対面の学生を相手にする時は、『出身はどこ?』とか『好きな科目は?』とか『何か得意な事はある?』とか、そんなトコロから話し始めるんだけど。

(ミライにそれを聞いたって、)

きっとさっきと同じ『わからない』って返事が返ってくるだろうし。

(ムズかしいな)

ミライは一体、どんなことを聞けば答えてくれるのだろう。

「なあミライ、君の知ってる事ってどんな事なんだ?」

単刀直入に聞いてみた。

「知ってること?」

と、ミライが首を傾げたままじっとカタまってしまった。

(聞き方が悪かったか。答える範囲が広すぎたみたいだ。もっと絞り込もう…)

ふと、目に付いたテレビのリモコンを手に持った。

「テレビのつけ方は知ってるかい?リモコンの使い方は?」

リモコンを差し出しながら問い掛けると、ミライがじっとリモコンを見つめ返してきた。

「知らない。どうするの?教えて?」

とミライが、パッと顔を上げ小首を傾げて聞いてきた。

(お、やっと会話らしくなったゾ)

ようやく応えてくれたミライに、リモコンを手渡して声を掛けた。
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